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ドロドロの人間関係と知財警告状(パクったなら即著作権侵害?)

2016年11月26日不正競争警告状対応, 商標警告状対応, 意匠警告状対応, 特許警告状対応, 知財(全般)警告状対応, 著作権警告状対応

間違った思い込み

「共同で事業をやろうとしたが、結局ポシャった先から、著作権侵害の警告状が届いた。

先方がかつて提案した企画のコンセプトを、自社の新企画が無断で使用していると指摘している。

実際、自社の新企画のネタ元は、かつて先方が提案した企画である。パクりがバレてしまった。

これはもう、ドンピシャで著作権侵害なんだろう。」

正しい心構え 

「日本語でいう「パクること」と、著作権侵害はイコールではない。

パクったことが事実だからといって、著作権侵害かは全くわからない。

特に、「コンセプト」や「アイデア」など抽象的なものをパクったという場合は、高確率で侵害でない。

 

ただし、著作権侵害にならないと理屈で反論するだけでは、現実の争いの解決は困難。

時には、法的な理屈を棚上げして、柔軟に対応することも大切。」

解 説

過去に、自社との間でドロドロした関係があった相手から、

知財の警告状が送られてくることがあります。

 

①一枚岩だった組織が分裂した後に、他方の勢力から送られてくる、商標の警告状。

②自社の代表者の、昔の勤務先から送られてくる、営業秘密(不正競争防止法)の警告状。

③共同事業の計画がポシャった後に、相手(クリエイター)から送られてくる、著作権の警告状。

 

こういったものが、典型的ですね。

 

このような、過去にドロドロした人間関係があった相手からの知財警告は、

別の原因で生じた恨みや怒りをぶつけるための手段として、知財を使っていることが多い。

 

つまり、表面的には知財の警告であっても、根本的な紛争の原因が、知財以外のところにあるために、

知財だけを見ていては、もつれた糸を解きほぐすことができない。

 

このような、過去にドロドロした人間関係があったもの同士での知財警告状の対応は、

ライバル社間での特許侵害警告のような、「純粋な知財の問題」とは、かなり趣を異にします。

むしろ、離婚や相続といった、親族間のトラブルに近いところがあります。

ここはやはり、弁理士というより、弁護士の得意領域だと言うべきでしょう。

 

(ちなみに、訴訟になっても、「純粋な知財の問題」だと、ほとんど証人尋問なんてやらないのですが、

こういう、ドロドロしたケースだと、証人尋問をやることも多かったりします。

弁護士の中でも、さらに、刑事事件などにも共通する、尋問の腕が問われることになります。)

 

 

今回は、ドロドロとした人間関係のある話の中でも、特に、

③共同事業の計画がポシャった後に、相手(クリエイター)から送られてくる、著作権の警告状

を取り上げて、どう対応すべきかを考えてみましょう。

 

「共同で事業をやろうとしたが、結局ポシャった先から、著作権侵害の警告状が届いた。

先方がかつて提案した企画のコンセプトを、自社の新企画が無断で使用していると指摘している。

実際、自社の新企画のネタ元は、かつて先方が提案した企画である。パクりがバレてしまった。」

 

という、冒頭の思い込みのケースですね。

 

相手から、作品を「無断で使った」という著作権の警告状が届いた場合、何を検討すべきでしょうか。

 

まずは、そもそも、「使った」といえるのか、ということを検討します。

例えば、イラストの草案を勝手に製品に使いまわした、という警告であれば、

実際に使いまわした事実があるのか、ということを確認します。

ここの答えが「No」であれば、ここをキチンと反論して、相手の誤解を解けばいいわけです。

 

次に、実際に使ったことが否定できないなら、「無断で」使ったといえるのか、ということを検討します。

過去に、仲良く付き合っていたことがある相手だけに、

「以前に、あなたから正式な使用許可をもらったではないか」という反論ができる可能性があります。

こういった反論がキチンとできるなら、これも問題ありませんね。

 

ここまでは、一般の方の常識からしても、自然な話だと思います。

 

しかし、中には、相手の作品を「無断で」「使った」ことを、両方とも否定できない場合があります。

このような場合、自動的に、著作権侵害となるのでしょうか?

 

そうではありません。そう判断する前に、考えるべきことがあります。

 

著作権というのは、特許権や商標権とは、根本的に違う権利です。

「そういう権利があること」について、事前に、国(特許庁)からお墨付きをもらっていないのです。

だから、著作権の警告状が来たときは、常に、

「本当に、著作権の名に値するものを持っているのか」ということに、注意する必要があります。

ここに注意しないと、「俺には著作権がある」と、言ったもん勝ちになってしまいます。

 

そして、作品のジャンルの別を問わず、ポイントとなるのは、

著作権というのは、具体的な表現についてのみ生じて、抽象的なアイデアには生じない、ということです。

 

具体的な表現というのは、実際に、そのものを見たり聞いたりできるもの、とでも考えてください。

文章でも、イラストでも、音楽でも、プログラム(ソースコード)でも、

具体的な完成形については、実際にそのものを見たり聞いたりできますよね。

 

他方、抽象的なアイデアというのは、

言葉では説明できるけれど、実際にそのものを見たり聞いたりできない、というようなものです。

例えば、「コンセプト」「アイデア」「あらすじ」「企画案」「着想」「枠組み」

などといった言葉で表現されがちです。

 

相手が、警告状の中で、抽象的なアイデアを無断使用したから著作権侵害だと言っていても、

そのようなアイデアには、そもそも、著作権は成り立ちません。

したがって、アイデアを無断使用していたことが事実であったとしても、著作権侵害にはなりません。

このように考えて、大丈夫です。

つまり、無断使用したことが否定できなくても、法的な理屈の上では、十分に、反論が可能です。

 

ただし

今までの法的な理屈の話と、同じくらい重要なのは、この先です。

 

仮に、アイデアを無断使用することが、法的には全く問題ないとしても、

実際に無断使用されたならば、苦労してアイデアを思いついた人は、怒って当然です。

特に、それがプロのクリエーターであれば、なおさらでしょう。

 

このような、ある意味、人として当然の気持ちと言うべき相手からの警告に対して、

理屈では著作権侵害にならないからといって、冷たく要求を拒絶するだけでは、必ずこじれます。

こういう初動対応のマズさから、こじれて訴訟に巻き込まれることは、非常に多い。

 

いくら著作権法からして無理筋の要求だといっても、

相手の代理人に、あまり著作権を知らない弁護士(非常に多い)が付くと、そのことが理解してもらえず、

十分にいけると踏んで、訴訟提起してくることもある。

 

もちろん、訴訟をやれば、最終的には相手が負けます。これは予測できます。

でも、訴訟にかかる弁護士費用はタダではありません。

訴訟の過程で、相手が世間に対して、「著作権を踏みにじる会社だ」という一方的なアナウンスをして、

自社のイメージが悪化することも、あるかもしれません。

 

理屈を貫いたときに予想される、こういったデメリットを考えれば、

相手の怒りに誠実に向き合い、話を聞き、お詫びすべきはお詫びした上で、

いくらかのお金を払ってまとめるような解決も、大局的な判断として、十分にあるだろうと思います。

 

個人的には、こういう解決は好きです。

弁護士自身が、相手に会いに行き、直接じっくりと話を聞いて、怒りや恨みの感情を解きほぐす。

こういう交渉ができるのが、腕のある弁護士だと、個人的には思います。

 

知財は、純粋な理屈の争いのようでいて、

結局、人と人との争いであることに変わりはないわけですから。

最終的に解決に必要なのは、相手との信頼関係であることは、間違いありません。

 

 

<突然、知財(特許・商標・著作権・意匠・不正競争防止法)の警告状が送られてきた。

 訴訟にはしたくない。でも、今までと同じようにビジネスは続けたい。

 知財については初心者だけど、どうやって対処すればいいのだろう?

 

 このブログは、そういった方のための、転ばぬ先の杖です。

 初心者の方にありがちな(でも、実は専門家にもありがちな)間違った思い込みを、

 毎回一つずつ取り上げます。

  

    どこが間違っているのか、じゃあどうすればいいのか、

    弁護士・弁理士の北川修平が、詳しく解説します。>

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