知財警告状には必ず回答しないといけない?
2016年11月9日不正競争警告状対応, 商標警告状対応, 意匠警告状対応, 特許警告状対応, 知財(全般)警告状対応, 知財について, 著作権警告状対応
間違った思い込み
「知財(特許・商標・著作権・意匠・不正競争防止法)の警告状が届いたら、
必ず、回答しなければいけない。」
正しい心構え
「回答した方が得になるなら回答すべきだし、得にならないのなら回答すべきでない。」
解 説
「回答した方が得になるなら回答すべきだし、得にならないのなら回答すべきでない。」
これ自体は、当たり前の話ですね。当然の理屈を言っているだけです。
でも、実際問題、回答しない方が得になる場合なんて、あるのでしょうか?
実は、あるのですね。
どういう警告状が、要注意なのか。
代表的なものは、
「たまたま目についた相手に、手当たり次第に権利を売り込む、営業目的の警告状」です。
特許を例に、説明しましょう。
特許警告状を送ってくる相手というのは、同業のライバル会社だけではありません。
聞いたこともないような会社や、発明家とおぼしき個人から、警告状が届くことがあります。
警告状の文面を見ると、自社製品のことについて、あまり詳しく触れていない。
一般的なことしか書いていない。
このまま、どこの会社にも送れそうな、使いまわしの文面っぽい。
おそらくは、自社以外の多くの会社にも、同じような警告状を送っているのだろう。
こういった警告状は、大概、自分の持っている特許を、
誰かに売りつけよう(ライセンスしよう)という、営業目的の警告状です。
自分の持っている特許の技術分野と、多分近いところで商売をやっているだろう、と、
適当に目星をつけた会社に、警告状を送り付ける。
多くの会社に対して、各社の製品の詳しい調査もせずに、ダイレクトメールのように警告状を送り付ける。
(そして、送られた側の自社としては、詳しい調査をするまでもなく、
こんな特許と自社製品には何の関係もないと、簡単に判断できる。)
こういった警告状に対しては、わざわざ回答せずに無視した方が、利益になる場合も多いです。
というのも、こういう会社や個人は、無視されることも承知の上で、
多くの会社に警告状を送り付けているわけです。
下手に回答すると、むしろ、回答したこと(お付き合いしてあげたこと)自体から、
「実はあそこは自分の特許を侵害しているのではないか。
少しやましいところがあるから、わざわざ回答を返信してくるのではないか。
そうすると、売り込みに脈アリではないか。」
などと、思われかねない。
警告状に回答すること、そのこと自体によって、見込み顧客だと目を付けられて、
その後の面倒(しつこい交渉の催促、不当訴訟等)に巻き込まれかねない。
訴訟で負けることはないにせよ、余計な弁護士・弁理士費用がかかってしまうかもしれない。
こういう相手は、最初から無視するに越したことはないわけです。
もちろん、このような場合は、数としては多くはありません。
警告状に対しては、何らかの回答をした方が得になる場合が、ほとんどです。
それどころか、絶対に回答しなければならないケースがほとんど、と言ってもいいかもしれません。
しかし、何事も例外はあります。
「警告状には必ず返信する」というマニュアル的な対応は、思わぬところで足元をすくわれます。
思い込みにとらわれず、行為の損得を冷静に分析することが、重要です。
<突然、知財(特許・商標・著作権・意匠・不正競争防止法)の警告状が送られてきた。
訴訟にはしたくない。でも、今までと同じようにビジネスは続けたい。
知財については初心者だけど、どうやって対処すればいいのだろう?
このブログは、そういった方のための、転ばぬ先の杖です。
初心者の方にありがちな(でも、実は専門家にもありがちな)間違った思い込みを、
毎回一つずつ取り上げます。
どこが間違っているのか、じゃあどうすればいいのか、
弁護士・弁理士の北川修平が、詳しく解説します。>
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