国が認めたから、特許は当然有効?
2016年11月13日特許警告状対応
間違った思い込み
「特許庁という立派な国家機関が登録を認めたのだから、
当然、相手の特許は有効だろう。」
正しい心構え
「特許庁が登録を認めた特許も、
後から頑張れば、かなりの確率で無効にすることができる。」
解 説
これは、特許実務に馴染みのある人にとっては、ごく当たり前のことです。
ですが、馴染みがない人にとっては、かなり意外な事実ではないでしょうか。
わざわざ説明されない限り、思いつかないことではないでしょうか。
だって、役所が一旦は何かを許可したのに、後からこれが完全に無効になってしまうことって、
特許以外の世界では、滅多にないことですよね。
ある人が、めでたく試験場での学科試験に合格して、車の運転免許を取得した。
なのに、後になって、公安委員会から呼び出されて、
「実は学科試験は不合格でした。だから、あなたの免許はそもそも無効です。」と言われた。
こんなこと、聞いたことないですよね。
運転免許の世界では、ほとんどありえないことです。
でも、似たようなことが、特許の世界では頻発するのですね。
しばしば、「登録したのは間違いでした。あなたの特許はそもそも無効です。」と言われてしまう。
素朴に考えれば、これって結構ビックリです。
警告状を送られた側からすれば、
相手の特許の権利範囲に、自社製品が含まれていることは否定できなくても、
狙って、その特許自体を無効にしてしまうことで、一発逆転ができる。
これが特許の面白さであり、恐ろしさでもあります。
どうして特許が後から無効になるのか、詳しいメカニズムは、改めて説明します。
それよりも大事なことは、
特許というのは、意外なほど、後から無効になりやすい、
という結論自体を、よく知ることです。
特許とはそういうものなのだ、という基本的なイメージを持ってほしい。
これは、別の言い方をすれば、
専門家(弁護士・弁理士)に依頼すれば、かなりの確率で特許を無効にできる、
ということです。
警告状を 送られた側にとって、このことを知ると知らないとでは、天と地ほどの差があります。
このことを知れば、心に余裕が生まれてきます。
相手の特許が、自社製品にドンピシャでも、必要以上に焦ることはない。
負け筋だと諦めてしまう必要は、全くない。
頑張って、相手の特許を無効にできそうな資料を探し当てられれば、
これを相手に突き付けて、十分に、有利な交渉を行う余地があるわけですから。
お上がお墨付きを与えた権利である割に、後から無効になりやすい、というのは、
覚えておいて損はない、特許ゲームの基本中の基本の知識です。
<突然、知財(特許・商標・著作権・意匠・不正競争防止法)の警告状が送られてきた。
訴訟にはしたくない。でも、今までと同じようにビジネスは続けたい。
知財については初心者だけど、どうやって対処すればいいのだろう?
このブログは、そういった方のための、転ばぬ先の杖です。
初心者の方にありがちな(でも、実は専門家にもありがちな)間違った思い込みを、
毎回一つずつ取り上げます。
どこが間違っているのか、じゃあどうすればいいのか、
弁護士・弁理士の北川修平が、詳しく解説します。>
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